Mサンデル 白熱教室 '21



再開の白熱教室 .

マイケル・サンデル教授の白熱教室。好き嫌い賛否両論さまざまにご存知の方も多いかと思います。9年ぶりに新著「実力も運のうち 能力主義は正義か?」を書き下ろした教授は今回、パンデミックで炙り出された社会のひずみ、コロナ禍を生きる私たちひとりひとりが問うべきことは何かを、日本の学生6名(東大・慶應)、中国・清華大学の学生6名、アメリカ・ハーバード大学学生6名とともに話し合いました。




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努力という妄想? .

「 君の成功は努力の結果か、それとも運か。 」 努力とは単なる運ではないのか? こんなことを大学生・大学院生に投げかけます。マイケル教授は、学生が変質してきていることを気にかけていたらしく、エリートが横暴になっているのではないかと感じ新著編集に着手したらしいです。今回の実際の学生たちは、なるほど、Z世代の彼らはそつなくそれぞれ上手に答えてましたよね。こんな議論に慣れてるんでしょうか、それとも、表向きの回答をいつも用意している子らだったんでしょうか。








職業によって? . 

議論は、コロナ禍(パンデミック)は、社会を分断する見えない壁を露わにしたことについて掘り下げていきます。例えば、デスクワークのホワイトカラー( ギガワーカー・個人事業主含む )は、リモートワークをしていて感染リスクの少ないところに温存されるかのようになっているが、フードデリバリーやブルーカラーのエッセンシャルワーカー( 医療従事者含む )は感染リスクの高いところで通勤・勤務している。後者は比較的低賃金と思える方々だが、要は「エリートの私たちは」そういう方達に感謝や敬意を払わずに感染リスクを押しつけているのではないか?ということを率直に問うたのでした。






また、ロックダウンは日本では出来ませんが海外ではほとんどの国がやった政策です。それでも「 政府には自宅待機を強制する権利がある 」と思うかを問うと、日本4・中国4・アメリカ5人が賛成します。また、ワクチン接種にインセンティブ( ドーナツ・ビール無料引換券やワクチン宝くじなど )は必要かをと問うと「 ワクチンの重要性を理解させないで情報にマスクしていることになる(慶應大) 」 「 ( 末端まで説明・理解を行き渡らせるのは難しいので )実務上インセンティブも必要と思う( 東大 )」との答えが返ってきていました。





気持ちと支払う価格と? .

また、医療従事者において183ユーロの賃上げフランスのことを周知しておいて、現在買い物代行の方々やデリバリーをしてくれる方々にどう報いていけばいいか?感染リスクをアウトソーシングしている?後ろめたさを感じる?という質問をすると、日本5・中国4・アメリカ1が手を挙げます。そして、エッセンシャルワーカーの待遇改善が必要( 日本6・中国5・アメリカ5 )を前提として、それをサービス料金に跳ね返らせない価格に添加できないよう企業の努力によって行うべきという意見も出されます。








経済の上層下層って? .

一方で、警察官や消防士もエッセンシャルワーカーだ、あえて危険を選ぶ仕事の報酬はどれくらいがいいのか、経済の最下層にいるべきでないなどとの意見も出されますが、大人が客観的に見ている分には堂々巡りが繰り返され結論には及びません。









サンデル教授が導きたかったのは、「 能力主義においては、われわれはどれほど頑張ったとしても、自分だけの力で身を立て、生きているのではないこと。才能を認めてくれる社会に生まれたのは幸運のおかげで、自分の手柄ではないことを認めなくてはならない。」ということのようです。









ここ数十年の社会をみると、勝者と敗者の分断が深まっています。それが私たちを引き離している。団結や結束といった社会的なつながりが損なわれているのです。その一部は、世界中におけるここ数十年の格差の拡大によるものです。ただ、それだけではありません。成功に対する姿勢が変わっていることにも関係していると思います。トップに立った人、成功した人は、自分の成功は自分の功績だと考えるようになります。このため、成功に伴い市場がもたらすあらゆる物質的な恩恵は、自分の手柄だと考える。一方で、取り残されてしまった人は、自分はそうした運命に値するに違いないと考える。こうした成功についての考え方は、一見魅力的な考えを反映しています。それは merit(能力、功績)、または meritocracy(能力主義)です。機会が平等であれば、レースに勝利した人は、勝利に値する、という考え方です。でも、それは勝者の謙虚さの欠如につながります。成功を収めた人が、幸運にも助けられたということを忘れてしまうのです。そして自分ほど幸運でない人を見下すようになる。「能力主義の横暴」というのはそういう意味です。成功した人が、成功は自分自身、個人の功績だと考えるようになる傾向です。私はこうした考えに批判的で、疑問を持ち、考えてほしいと思っています。




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サンデル教授は、最後に大切なことを伝えています。




現在の正義は――パンデミックの1年の経験の後、正義には質問をすることが必要です。どのように拡大する社会の分断をいやすことができるのか。どのようにしてパンデミックが浮き彫りにした不平等を緩和することができるのか。これらは正義についての質問です。簡単な答えはありません。私が示唆しているのは、民主主義社会として、これらの大きな質問について議論する必要があるということです。正義について、何が公正な社会なのか、パンデミックが明らかにした不平等にどのように対処するのか。これらが正義について、民主主義社会の市民として私たちが共に議論すべき質問です。




私たちはパンデミックでさまざまなことを経験してきました。ここ1年、暗い、困難な時期でした。でも希望の光が見えています。パンデミックはまだ続いていますが、退却しつつあります。パンデミックを克服する中で、私たちは何を共有しているのかを再考する機会があります。私たちには、本当の意味で「皆一緒に頑張っている」と言える社会をもたらす力があります。これはパンデミックの当初によく聞いたスローガンです。私たちには、その約束を実現する機会があるのです。「皆一緒に頑張っている」と言える社会です。そして追加したいのですが、パンデミックによって私はかなりの期間にわたって日本を訪れることができないでいます。そう遠くない将来に日本を訪れるのを楽しみにしています。日本に戻り、学生だけでなく、一般の人々とも、正義の問題、パンデミックからどのように回復するか、私たちは皆一緒だと感じ、信じられるようなよりよい社会をどうつくっていくかについて議論したいと思います。





彼が「 正義 」としている表現は少し気になりますが、翻訳のニュアンスもありますので、軽めにスルーしておきましょう。









リンクをいっぱい盛り込みました。新著のキャンペーンの時期でしたので今後いつまで・どこまで残っているのかは分かりませんが、一応ここまででテーマを提示して彼が何を伝えたいと考えて議論したのかのアウトラインを起こしておけたらなと思いました。みなさんはいかに考えられましたか?




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ご参考までに、こちらもぜひ。




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